はんだ付け技能のトレーニング How To Traning of Soldering
 このページは、はんだ付けを初心者に教える方法について、某ユーザーの論文の一部を掲載しています。

 参考になれば幸いです。

始めに
まず、コテに馴れてもらうこと
 はんだ付けの初心者に初めて教えるときには、いきなり部品のはんだ付けをさせるのではなく、基板の銅箔の上に自由にはんだを溶かすことから始めるといい。

 この目的は、まず、コテに馴れさせることである。

 それまで工具というものに縁の無かった人に、あれもこれも一度に教えると混乱する。
 車の運転の教習で、ハンドルを初めて握った者に、「右を見て、左を見て後ろを見て、ブレーキは分けて踏め、エンストはするな」と言うようなものである。

 市販の基板にエッチング前の( レジストの印刷されてない )銅箔だけのものがあるが、これを用いる。
 ユニバーサル基板でもいいが、銅箔の面積が広いと、予熱→はんだ供給→加熱→拡散→凝固の様子がよく見える。

 銅箔の上にきれいな盛り上がりの丸いはんだが揃ってできるようになるまで、自由に練習させる。そうすると、次の上達が早い。これに要する時間はせいぜい半日である。


はんだの特性
はんだは低温から高温に流れる
 ベタの銅箔の上にはんだを流し、融けて広がった部分に糸はんだを供給すると、高温のコテ先に、はんだが吸い込まれるように流れていくのが観察される。

 これは、ベテランでも知らない人が多い。

 初心者は、はんだ付けとは、融かして流し込むものだと理解するかもしれない。それはその通りで、フィレットの形状と艶だけをみていればそれでいいとは言える。
 しかし、合金層の形成がはんだ接合のポイントであるから、それのイメージの代用として、この熔融現象を観察してもらうといい。

 いきなり部品リードのはんだ付けをさせると、この「低温から高温に流れる」ことが理解できていないので、コテ先の上部ではんだを融かすクセがつきやすい。
 同時に、ベタの銅箔とユニバーサル基板のランドでは、熱容量が違い、したがって予熱の時間が違うことをよく知ってもらう。

 母材の適切な予熱と、コテ先の上の方にはんだを供給しないことは、高品質のはんだ付けにもっとも大切な、というより不可欠な条件である。


最初のはんだ付け
角チップから始める
 最初のはんだ付けは、表面実装の角チップから入るのがいい。

 もし、チップをボンドで仮止めしてある基板があればベストである(チップをピンセットで位置決めするのは難しく、余計な神経を使うので)。

 角チップは熱容量が揃っているので、案外に上達が早い。人によれば、半日で使いものになるはんだ付けができるようになる。
 たとえば抵抗とかコネクタなど、熱容量のバラバラなものを随意にはんだ付けさせると、予熱時間と保持時間が違うので、コツを飲み込みにくい。
 なにに限らず、パラメータの数が少ないところから入っていくのが上達の早道である。
 

大切なことは初めに教える
 必ず理解・修得してもらわなければならない事柄は、次の各項である。

 

 
 
 

    (1) 部品とコテ先の中間にはんだを供給する
    (2) 適切な予熱が大切で、これが微妙であること
    (3) フラックスの働きを理解する
    (4) ただしい濡れと艶
    (5) 一度で決めなければならない
    (6) コテを押しつけない
    (7) 周囲の部品を損傷しない
    (8) そして、速くすること
 
 

(1) 部品とコテ先の中間にはんだを供給する
 角チップ(2125など)のフィレットのはんだ量は少量であるから、コテ先の先端( パッドとの接触部 )に糸はんだをもっていかないと、リフローのようなきれいな形にはならない。

 

 
 
 

 ほんのわずかだが、必ず予熱の時間が必要である。
 パッドを充分に熱して、そこにはんだを供給して融かすと、きれいなフィレットができる。ただし、これをあまり速くすると電極へのなじみ不足になるので、考え方の参考として教えるに留めておく。

 表面実装の経験のないベテラン作業者は、はんだが早く融けるコテ先の上部に、糸はんだをもっていく癖がついているので、これがうまくいかないのである。
 また、温度設定が大切で、技量に適した温度であれば、おもしろいように整った形のフィレットが次々にできる。温度が適当でないとまったくうまくいかない。
 
 

(2) 適切な予熱が大切で、これが微妙であること
 ベテラン作業者の手つきを見ているだけでは、

 予熱→はんだを供給する→加熱→なじむ→はんだを引く→コテを引く→凝固するまで静置する
というプロセスが、動作が速すぎるために判らない。したがって、ゆっくりと実演してみせる必要がある。

 予熱が大切で、これを充分にしていると、はんだのなじみが速いことは、基本として覚えてもらわなければならない。これを理解した上で、手早い動作としてもらう。
 また、ある程度加熱を続けないとなじみが悪い(接合部の強度が弱い)ことも基本である。

 コネクタの電源ピンで、サーマルリングになっていても熱が伝わらない場合がある。女子作業員に「熱をとられる(熱伝導と熱容量)」と説明しても、なかなか理解してもらえない場合がある。その場合は理屈抜きに覚えてもらうしかないが、予熱をしすぎてもいけないので、注意しなければならない。
 
 

(3) フラックスの働きを理解する
 フラックスの働きも、最初はなかなか理解してもらえないものである。

 フラックスの切れたはんだで実演してみせて、よく理解してもらわなければならない。糸はんだはムクのように見えるが、断面を見ると、たくさんのフラックスが入っている。

 しかし、フラックスさえ補給すれば、どんなに劣化したはんだも生き返ると理解されても困るので、これに注意すること。
 
 

(4) ただしい濡れと艶
 初めから「外観検査基準」の不良例をあれこれ示すのは、考えものである。

 普通にていねいにはんだ付けをすれば、たいていは富士山の裾野型の濡れで、ピカッとした艶になり、もし、そうならないとしたら、やり直しをしたなど、作業者に何かの心当たりがあるはずである。

 ただしい濡れと艶にならないのはやり方がおかしいと、問答無用に教えるのも一つの方法ではあるかも知れない。
 ただし、彼女たちの責任ではない濡れ不良には留意しなければならない。濡れの現象はそもそも難しいものであるが、それだけでなく、たとえばボンドがはみだしているための未はんだを修正できないのも、自分の技量不足と思いこむ人もいる。

 なお、ブリッジなど、電気的接続の不良と、イモやツノなど、質についての不良を一緒に考えている場合も多いので、これにも注意しておくこと。
 
 

(5) 一度で決めなければならない
 はんだ付けは、一度で決めなければならない。

 やり直しをすればするほど、ますます手こずる。
 こういう事例は日常生活にはあまりないので、戸惑うようである。

 いずれ馴れればどういうことでもないので、失敗してますますうまくいかず、焦っている場合には、それが、はんだ( 熔接 )の特性である旨を教えてあげるといい。
 
 

(6) コテを押しつけない
 電子秤があれば、その上でさせてみて、押しつけない習慣をつけてもらう。50g以下にすることは、初めから教えれば難しいことではない。

 多層基板ではんだのなじみがよくない場合など、つい、力が入りがちになる。
 力を入れてコテが滑り、パターンを傷つけたり部品を壊すのは、製造の現場では処理が厄介で困ったものある。
 しかし、最初の頃に教えられたことは印象に残っているので、思い出させるのは容易であろう。
 
 
(7) 周囲の部品を損傷しない
 たいていの会社のテキストに書かれていなくて、現場のリーダーが困っているのは、初心者が部品をしょっちゅう焼くことであろう。

 ベテランでも、意識して作業に取り組まない場合には、ままあることである。
 狭い場所であれば、焼けそうな部品に養生テープを張り付ければいい。テープが焦げる臭いがしたら、要注意である。

 熱可塑性樹脂(挿入部品)と熱硬化性樹脂(SMD)の熱に対する弱さの違いは、できれば、サンプルで実演して見せるといい。
 皮肉ではなくて、種々のプラスチックの軟化温度をたちどころに説明できるのは、工学出身者でも少ないであろう。ましてや、女子作業者がこれらを同じものと思っているとしても、驚くには値しない。
 また、近年のコストダウンと小型化のため、コネクタが熱に弱くなっていて、はんだ付けのときにリードを動かしてしまう事故もある。

 はんだコテの運びは、右手で持つ場合は左から右、向こうから手前側というのも、学んでもらわなければならない。つまり、はんだ付けの結果を見られる方向に運ぶわけである。
 教えなければ、これが逆の方がいいと思う人もいる。
 
 

(8) そして、速くすること
 商売としての製造( 加工賃仕事 )は、第一にこれにかかっている。

 「速くしろ」とは、経営者にしてもリーダーにしても、大声で叫びたいところであろうが、馬は喉が乾いていなければ水を飲まないし、人は速くしなければならないと思っていても、どうすれば速くできるのか解らなければ速くできない。

 したがって、組立治具を考えてみたり、一番時間の少なくてすむ手順を検討するとか、目的にあったコテ先を選ぶなど、リズムに乗った作業ができるやり方を考えるわけである。

 作業を標準時間でこなすには、標準の動作を示さなければならない。そして、その時間で出来る環境を作らないで、その時間を強いると、品質が荒れるのは当然である。

 標準の動作を示さずに、その時間の達成を求めると、作業者はわざわざ難しい動作を自分流に作ることがある。
 これは、どうしていいかわからないので、”仕事をした気がする方法”を選ぶわけで、これをコツとか流儀という言い方ですまされるのは、いいことではない。
 しかし、一方では、作業をする本人がやり方に納得していなければならないことも事実である。
 

 本当は、単純な作業を速くするには、手の運び方、物の置き方、手順などに多様な解は無いはずである。が、試しに作業者に好きにやらせてみると、実に様々なバリエーションが発生するものである。

 自分の手足の動かし方を他人にいわれたくないのが、加工業の難しさであろう。
 
 

クリーニングは最小限度に
 コテ先のクリーニングの習慣はもちろん大切である。これについては意識して正しいやり方を教えなければならない。趣味で清掃をするのではないのであるから。

 

 
 
 

 コテ台からコテを取るとき、ついでに手前のスポンジにコテを下ろしながら、半回転ほどひねってクリーニングするのが正しい。
 恣意のままさせてみると、必ず、2回以上、コテ先を突っ込む。 ひねるというのは教えなければわからない 。
 気持ちはわかるが、金儲けをしているのであれば、1時間に20回、3秒の無駄な動作を習慣としてするわけであるから、1日に7分、1年に20時間以上を、金にならない動作に浪費するわけである。

 浪費というのは、この動作が集中力をそらし、プラスの要素にならないからである。1日の作業時間のうち、7分を秘かに首の運動に当てるのとは意味が異なる。

 このクリーニングのやり方は、最初のうちにクセとして身につけてもらわなければならない。試しに、自社の作業者を観察してみると、どのような性格の人がどのようにしているか、なにかの発見があるはずである。

 ついでに言うと、方向性のあるコテ先は、はんだコテを自然に握ったときに、コテ先が正しい向きになっているように装着する。ハンダコテのコードには少しクセがついているが、コテを取るたびに握り直すのは、無駄な動作である。

 コテをコテ台に戻すときにもクリーニングをするのは、工具を大切にするという意味では全く正しい。が、コテ先を消耗品と割り切って不要な動作をさせない考え方も、一方にはあり得る。

 スポンジの水気はできるだけ少なくする。この加減を理解してもらうのも難しい。
 多すぎる水気は、はんだを凝固させて、クリーニングができない。水蒸気の発生による界面現象で清浄作用がなされることは、見てきたような嘘を言ってでも、理屈として覚えてもらわなければならない。そうでなければ、水気はどうしても多めになる。

 わずかでも水気があれば、スポンジは傷まないのである( 傷んだとしても安価であるが )。それよりもコテを押しつけるために変形したコテ先( これは技量をみる意味で、注意してよくチェックしておくのがいい )が、スポンジを引っかけるために傷む場合がほとんどである。

 実際のところは、休憩時間に洗面所に行ってスポンジを濡らすのが面倒であるくらいの理由で、たくさんの水を含ませるのかも知れない。
 そういう心理を責めるより、それを実行してもらえるように、PETボトルの栓に穴を明けたものを作業場所のあちこちに用意しておくのがいい。
 もっといいのは、市販のディスペンサーの容器を揃えることである。スマートで、必要なだけ少量の水を補給できる。

 コテの温度を高くして作業すると、コテ先に劣化して変色したフラックスが溜まり、これが基板に落ちると、美しくない。
 これはクリーニングの回数が不足しているというより、はんだをコテ先に供給する量もしくは位置がよくないのである。
 はんだは高温部に溜まり、表面張力で保持できなくなった部分が重力で落下する。フィレットに消費される量だけを、コテ先と基板の接触部に供給すれば、溜まった余分なはんだは落ちてこない。
 初心者は教えない限り、これを勘違いしているので、神経質な人では、しょっちゅうクリーニングばかりをすることがある。


ファインピッチの要領
顕微鏡を活用する
 実体顕微鏡(8倍以上)などをのぞきながらはんだ付けをすると、表面実装に要求される技能の上達がきわめて早い。フィレットをリフローと同じくらいにきれいにするには、この経験が不可欠である。

 

 
 
 

 顕微鏡で見ていると、糸はんだの供給の微妙な加減がよくわかるので、はんだとはんだのはんだ付けも簡単にできる(もちろん、いいコテが条件であるが)。
 一度顕微鏡でおぼえたカンは、裸眼でもできるようになるから不思議である。


工具の選択

 
能率を考える
 はんだコテは、はんだ付け作業の基幹となる道具であって、たまにしか使わない工具とは意味合いが違うので、よく検討するべきである。

 

 
 
 

 コテは、温度調節ができるのがよい。一度、温度調節式になれると、元のはんだコテには戻れない。
 コテの選定は、温度調節だけでなく、温度回復のいいことも条件である。

 温度調節機能付きのコテでは、エディスンインターナショナルのものが、比較的安価で、コテ先の交換や握り具合、温度設定の変更など使いやすい。

 コテ先は、作業内容に応じてまめに交換するべきである。
 ふた昔まえ、その頃、国産品が追従できなかったアンテックスのコテは、コテ先が差し込み式で、何種類かの鉄メッキのコテ先が用意されていた( 国産品は銅製で、ビスで固定してあった )。
 筆者は正直言って、どのように使い分けるのか、想像ができなかった記憶がある。

 ひとつのコテ先でなんでもやってしまうのは、はんだ付けの名人( 曲芸師 )かも知れないが、産業人としての職人ではない。
 このため、一人の作業者に2本のコテを持たせると、心理として、まめにコテ先を交換するようになる。
 

費用対効果
 はんだコテに限らず、工具は金儲けの手段であるから、費用対効果の計算は必ずするべきである。

 

 
 
 

 経営者のほとんどすべては、投資金額の大きい設備に目を奪われ、朝から晩まで握っているはんだコテの費用対効果には思いが至らない。
 これは、実に不思議であると言いたいのだが、筆者の体験でも、加工賃仕事の経営者は金の出入りに追われているので、人が使う工具の費用対効果について、冷静に分析するのは、たやすいことではない。

 そして、サラリーマンの管理職には、「工具によって金を儲けること」には理解が至らない。
 これが暴言だと思うなら、請負制で成り立っている建築や電気工事業界の工具の充実ぶりをみてみるといい(市場の規模も大きいが)。

 事実は次の通りである。

 はんだコテの違いにより、能率が 2% だけ違うとすれば、10人を雇用していれば、1年に少なくとも40万円は人件費が異なる。


はんだ付けの品質

 
手許を見つめること
 


トレーニングのバリエーション

 
もしもピアノが弾けたなら
 はんだ付けの技能を教えるのは、たとえばテニスを教えるとかピアノを教えるのと同じである。違うのは、趣味と労働という点である。趣味の場合は、学ぶ人の自発的な意志がある。労働の場合は、モラルに期待することになるだろうか。

 

 
 
 

 技能を教えようとする場合、まず基本を教え、基礎的な練習の繰り返しをさせることで上達を図るのが正道であろう。未熟なうちに、込み入った作業を強いるのは、上達を妨げるのでよくない。

 この辺りの配慮は、小規模の会社ではあまりなされていないような感がある。
 比喩的に言えば、ピアノを一台与えておいて放任し、勝手に練習させておいて、演奏会が開ける(プロとなる)のを期待しているようなものであろう。
 
 

留意点!

 
 角チップのように微細な部品のはんだ付けから入ると、コネクタなどの大物部品はかえって手間取るようになる。小技と大技というのだろうか。

 そこで、ある日はSMD、次の日はディスクリートというように敢えて切り替えるのが適当である。

 この作業の切り替えのタイミングは難しい。だいたい、ひとつの作業にひとまず馴れるのには3時間、習熟するには3日間を要し、ベテランでも、基本的には、この通りである。
 
 

修得のステップ

 
 また、QFPの取付や多ピンコネクタの流しはんだのように高級とされる技能は、なるべく早い時期、一ヶ月くらいで、ひとまず挑戦させてみる。実用にはならないであろうが、時間をかけて曲がりなりにも品質のいいはんだ付けの成功体験を持たせること。

 リード変形とパターン剥離があると困るが、これは押しつける力と温度の問題であるから注意すれば回避できる。

 なぜ、早い時期に教えるかというと、三ヶ月あたりで作業者の技能は安定するが、その時点の枠から出ようとしない心理が働きだすからで、この時期に入ったら、なかなか新しいステップは習得できにくくなる。次のステップまでには、1年を待たなければならないであろう。

 このわけは、はんだ付け作業は細かい「根」を詰めるしんどい作業であるから、そんなに高い賃金で働いているわけではない彼女たちにしてみれば、疲労の蓄積と、ひとまず作業に余裕ができたために、もう充分ではないかという気持ちになるからと思われる。


トレーニングのありかた
オン・ザ・ジョブ・トレーニング?
 初心者のトレーニングの期間と内容をどうするかは、会社の事情によって様々であるし、作業者をどのように使うかは経営のあり方であるから、一概に言うことはできない。

 

 
 
 

 しかし、初心者(女性であれば、はんだ付けはおろか、工業の技能には、それまで無縁であるのが普通である)にとって、自分の技量に自信が無いうちに、サポート無しに生産ラインに投入されるのは、苦痛である。それがベルトコンベアラインであれば、なおさらのこと。

 この心理は男性のトレーナーには理解しにくいであろう。女子作業者の技能が向上しないのは、この心理が理解されていないことに尽きると言ってもいい。

 慣れない状態で自らの位置付けができないままに生産ラインに入った作業者の心理は、我流で頑張るか、捨てばちになるか、その中間を揺れ動くかである。

 頑張って自らが技量を身につけてくれれば、経営者としては楽であるが、そのような時代は30年前の話であろう。
 いや、今でも30年前のスタイルで経営が成り立たないというわけではないが。
 
 

使われる者の心理
 それぞれの会社のやり方があるので一概に言えないが、賃加工の会社が、はんだ付け技能者として育成しようとするのであれば、一週間以上は製品でない教材でトレーニングをするのがいい。そして、その期間は売り上げに寄与していないことを意識してもらう。

 

 
 
 

 とはいえ、大きい会社では、この意識を求めるのは難しいであろう。逆に、意識してもらえる雰囲気にある小さい会社ほど、長期間、トレーニングだけをするわけにはいかないだろう。

 この趣旨は、未熟なまま製造に携わると、当人は色んな意味で苦しむわけであるが、技能が向上しないのを会社のせいにしたり、低い技能に留まってしまう(この辺でいいやと思う)のを避けることにある。

 別の言い方をすれば、技能の上達は自分自身の責任であることを自覚してもらうことである。自覚というのは、文字通り自分で気づくことで、上司が命令してそうなるわけではない。

 自覚を求めるのであれば、それなりの扱いをしなければならない。
 

 中国の古くに、次の言葉がある。

 理由を告げずして死刑にすることを「暴」といい、
 教えずして結果を求めることを「虐」という。

 「暴虐」の字義通りの行為は現代の日本では特殊な閉鎖社会に時折みられるだけであるが、人間の心理の深層には潜んでいるような気がしないでもない。
 
 

技能の伝達は難しい
 技能の伝達は、学ぶ人の学ぶ意志を引き出すことにかかっているのは、どの時代でも普遍である。

 

 
 
 

 しかし、昔の先輩の背中をみて自分で技量を積み重ねた修得方法を現代に適用するのは、全くの時代錯誤である。
 なぜなら、その時代には今ほど人がひしめいていなかった事実と、情報が少ないので名人がお山の大将でいることが許されていた事情が忘れられているからである。

 技能というのは、芸術でない限り、他人との競争の要素が強い。これに芸術の要素( 絶対的な価値観 )を適度に取り入れるのがいい。
 といえば簡単であるが、人が人間である限り、なかなか難しいテーマである。
 

 「太陽の下に新しきことなし」とは、三千年前の西洋の言葉であるが、一方、「秒進分歩」とは、つい20年ほど前の、日本の造語である。
 変わらないことを論じる以前に、変わらなくては、食べていけない。
 しんどい時代ではある。
 


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